| 緊急地震速報の課題と対策 |
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| 課題1、重大被害が想定される震源地付近には警報が間に合わないという致命的欠陥 |
| 震源から波紋のように波として伝わる地震波には主にP波(初期微動)とS波(主要動)の2種類あります。地震の揺れは最初にP波(カタカタと揺れる小さな揺れ)が伝達され、次に強い揺れのS波が伝わっていきますが主な被害はこのS波(主要動)によってもたらされます。最初に伝わるP波(初期微動)の伝達スピードは毎秒約7qで、S波(主要動)は毎秒約4qです。地震が発生すると、全国に配置されたデジタル地震計(ナウキャスト・気象庁で約200か所、独立行政法人防災科学技術研究所が約800か所)のうち震源に近い地震計がまずP波(初期微動)をとらえ、オンラインで気象庁に報告され、地震によるS波(強い揺れ)が始まる数秒〜数十秒前に知らせるものです。ただ地震計が捉えたデータを解析するのに約2秒〜3秒かかとみられています。全国に約1000か所設置されている地震計は約30qメッシュ(間隔)といわれています。仮に震源から30q離れた地点に設置されていた地震計がP波をとらえたとしても秒速7qと考えますと、地震発生後すでに4.28秒経過した時点で観測されたということになります。先ほどの2秒と合わせ5.28秒〜6.28秒経過してから緊急地震速報が発表されるということになります。緊急地震速報発表時点でS波(大きな揺れ)はすでに震源から約21Km〜約25q進んでいるという計算になります。つまり最も甚大な被害がもたらされると思われる震源に近い地域に緊急地震速報が発表されてもすでに大揺れに襲われた後ということになってしまいます。また、海底には陸地ほど地震計が数多く配置されていませんので、沖の海底を震源とする海溝型地震の場合は正確に速報を出すことは困難になると懸念されています。また、2010年から切り替わる地上デジタル放送は情報量が多いため圧縮する時間が約2秒かかります。つまり地上デジタル放送では緊急地震速報が約2秒遅れるという問題やプラスマイナス震度1程度の誤差もあります。さらに高速道路などで緊急地震情報を見たり聞いたりした人、しなかった人。緊急地震速報をきちんと理解認識している人、していない人が混在していれば、見たり聞いたりした人だけが急ブレーキをかければ大事故につながるなどと懸念する声もあります。 それでも利活用 こうしたいくつかの課題はあっても、また都市直下地震では間に合わなくても東海・東南海・南海地震のような巨大地震の場合は被害軽減に役立つと考えています。大揺れが襲う5秒〜20秒前に緊急地震速報が間に合えば、あるいは連動させてエレベータの自動停止や、火気の自動消火ができるなど、二次災害防止や被害軽減に役立つと思います。よく、10秒では何もできないなどという人がいますが、何も知らないまま突然大揺れに襲われるより、たとえ数秒前でも知らされてから揺れが来るのでは被害は随分違うと思います。外部の避難場所まで避難できなくとも、近くに定めた安全ゾーンにいっとき避難すれば良いのです、万一何もできないときでも「身構える」だけでも緊急地震速報は役立つと思います。 |
| 防災アドバイザー山村武彦 |
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| 課題2、緊急地震速報を受信した後の実践的緊急行動マニュアルの致命的不備 |
| 気象庁のホームページに「緊急地震速報を見聞きしたら」というサイトで、緊急地震速報を受信した後の行動について具体的に解説しています。 (1)屋内にいるとき ※ 家庭では:頭を保護し、丈夫な机の下などに隠れてください。あわてて外に飛び出さないでください。 ※ 人が大勢いる施設では:施設の係員の指示に従ってください。落ち着いて行動し、あわてて出口には走り出さないでください。 (2)屋外にいるとき ※ 街中では:ブロック塀の倒壊等に注意してください。カンバンや割れたガラスの落下に注意して、建物から離れてください。 ※ 山やがけ付近では:落石やがけ崩れに注意してください。 (3)乗り物にのっているとき ※ 自動車運転中は:あわててブレーキをかけないでください。ハザードランプを点灯し、揺れを感じたらゆっくり停止してください。 ※ 鉄道やバスなどに乗車中は:つり革や手すりにしっかりつかまってください。 ※ エレベーターでは:最寄の階で停止させて、すぐにおりてください。 となっていて、詳細は一般向け緊急地震速報の心得参照としています。 しかし、これでは従来の「地震に襲われたとき」の行動指針とまったく同じです。せっかく最先端技術を駆使した緊急地震速報システムを利活用する意味がなく、もったいないと思います。地震の揺れがくることを事前に知ったとき、少しでも身の安全、被害軽減が図れるよう実践的緊急行動マニュアルを示し、国民運動として周知徹底を図ることにコストとエネルギーを傾注すべきなのです。 ※(1)の屋内にいるときで 家庭では「頭を保護し、丈夫な机の下に隠れてください」ではなく、「木造1階にいたら、直ちに出入口を開け、安全な場所に脱出してください」「2階以上だったら部屋から出て、いつでも次の階に脱出できる階段室などで揺れが収まるのを待ち、揺れが収まったら階段で安全な場所に避難してください」と指導すべきです。 私は過去43年間、地震災害現場を歩いてきました。そこで、なぜこの人は助かったのか、助からなかったのかを追跡調査してきました。地震に備えるというのは小さな揺れ(震度5以下)に備えることではなく、最悪の揺れ(震度6以上)に備えることです。なぜなら、最悪の揺れに襲われると多くの家が損壊する可能性があります(気象庁の震度階解説) 地震による犠牲者の約90%は家屋の損壊などにより室内で死亡しています。家屋が損壊すると同じような荷重をかけると、ほとんどの机はつぶれてしまいます。そして、もし机がつぶれなかったとしても室内にいた場合、ドアが変形し室内に閉じ込められる可能性もあります。そんなとき火災が発生すれば逃げ遅れてしまいます。 従来、「あわてて外に飛び出さない」としているのは、落下物による負傷を懸念してのことです。それは外へ脱出することを戒めるのではなく、屋根、外壁、ガラスなどの落下物防止対策の不備をこそ戒めるべきなのです。落下物対策を推進し、過去の災害現場を教訓にした実践的緊急行動マニュアルを策定しない限り、緊急地震速報運用の効果は得られないということになります。 ※(3)乗り物に乗っているとき 自動車運転中に緊急地震速報を見聞きしたらの後段で「揺れを感じたら、ゆっくり停止してください」としていますが、これでは揺れるまでは走行してくださいということになり、緊急地震速報を受信しての行動指針としては意味のないおかしなものです。 このように、次世代型防災システムといわれる緊急地震速報を運用しようとするとき、その受け皿となる見聞きしたときの現段階の緊急行動指針は致命的不備があると思われます。 |
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