防災・危機管理講演防災アドバイザー山村武彦 | 防災システム研究所 | 新宿歌舞伎町ビル火災タンク火災


川治プリンスホテル火災

 昭和55(1980)年11月20日、栃木県藤原町川治温泉の川治プリンスホテル「雅苑」で火災が発生し、3.582平方メートルを焼失しました。昼間の火災であったにもかかわらず、死者45人、負傷者22人という大惨事となりました。死者45人のうち40人は、東京都杉並区の2つの老人クラブの人たちでした。
火災概要
出火:1980年11月20日15:30分頃
火元は新館1階女性風呂場付近工事のトーチランプからとみられ、簡易耐火造(鉄骨)4F建て本館及び木造2F建て新館、3,582uを全焼。死者45人(内、宿泊客40人)、重軽傷者22名。出火当時、ホテルには112名の宿泊客がいた。亡くなった宿泊客40人は東京から紅葉見物に来た老人クラブの人たちだった。
 前年末に実施された消防査察で、消火栓、誘導灯など八項目にわたる消防用設備及び防火管理体制の不備が指摘されていたが、改善されていなかった。
また、火災初期段階で自動火災報知設備のベルが鳴動しているにも関わらず、ホテル側が「試験だから心配しないように・・・」と館内放送を流していたとのこと。たまたまこの日に本当に点検をやっていたらしいが、このホテルの館内放送が惨事を大きくしたともいわれている。その他にこの火災が大惨事になった理由として、
★度重なる増改築で建物内が迷路化していた
★バルコニーの無い構造で、煙により階段をふさがれ、避難上大きな問題があった
★従業員の出勤前であったため、適切な避難誘導がなされなかった
★宿泊客に高齢者が多かった・消火用水利が悪かった
正常性バイアス
 当日の宿泊客は112名だったが、火災報知器がなっているのに気づいて様子を見に行ったグループは助かったといわている。そこに防災心理学でいう正常性バイアス、集団同調性バイアスが働いていた可能性も否定できない
 なお、この火災について、1987年2月12日、東京高裁にて「防火戸や防火区画の設置、義務を怠り、避難誘導訓練を実施しなかった」として川治プリンスホテル元社長に禁固2年6ヶ月、執行猶予3年、元専務には執行猶予なしの禁固2年6ヶ月、出火の直接の原因となった建設作業員に禁固1年、執行猶予3年の判決が下った。