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| ライフスポット型防災/山村武彦 |
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| ★ライフラインからライフスポット型防災へ 1995年阪神・淡路大震災の時、関西に地震はないという安全神話などもあり、多くの被災自治体の避難所には水・食糧の備蓄はおろか、暖房設備の準備が少なかった。停電、断水、ガス停止が続く中、多くの被災者たちは親戚、知人、友人を頼って被災地を離れ他の地域に震災疎開した。その結果、安全な街づくりのキャッチフレーズで復興は果たしたが、地域によってはコミュニティが崩壊し、震災前にあった温もりや人情が欠落し無味乾燥の町になってしまったところもある。その後、大規模災害でもまちから逃げなくてもいいように、水害時の「輪中」のように、その地域(ブロック)ごとに生き残れるようにする「ライフスポット」という考えが生まれた。 配線(電気、通信設備)、配管(上下水道、ガス)、道路、鉄道など、つながっているライフラインは大規模災害が発生すれば、断絶する蓋然性が高い。そして、直ぐに救援物資も届かない可能性がある。 2024年能登半島地震で被害の多かった奥能登地域では真冬の厳冬の中、停電、断水、道路損壊などで物資不足により被災者たちは厳しい避難生活を強いられ、地元から離れ二次避難、三次避難をすることになった。その結果、復興計画が緒についても地元から離れる人が続出。奥能登の自治体では人口が急激に減少していて、地域によって こうした少子高齢化時代だからこそ、高齢者や若者が安心して住めるように「ライフラインからライフスポット防災」に舵を切るべきだと思っている。事前にきちんとした生活物資の備蓄、避難所等の冷暖房設備等の整備を行い、ライフラインが途絶えてもそのリカバリやバックアップできるように備蓄・準備し、その地域ごとに生き残れる体制「ライフスポット」を確立すべきである。ライフスポットは自治体だけでなく、個人・企業・ボランティアなどでも行えるよう国が支援すべき。喫緊課題は、自治体の備蓄基準・備蓄の義務化・財政支援制度等の法制化である。 少子高齢化が進む今日、その地域が育んできた文化や伝統、そして地域風土を維持して行くためにも、地域が折れないように持続可能な地域を維持するためにも事前復興計画の中にライフスポット防災を明確に進める必要がある。 ★能登半島地震の教訓 2024年1月1日に発生した能登半島地震では、被災自治体の備蓄量が少なく、奥能登地域の避難所では物資(水・食糧・トイレ・医薬品・日用品など)が不足し多くの避難者が厳しい避難生活を余儀なくされた。そして、地震をきっかけとする避難生活などで体調を崩し震災関連死と認定された人は全体の約66%(2025年10月現在)を超えた。せっかく大地震から生き残ったのに、過酷な避難生活で命を失うのは痛ましく残念でならない。1か月目に死因が確認された222人のうち、全体の14%にあたる32人が低体温症・凍死と判定された。その中には避難所で発症した人がかなり含まれていた。 地震から5日目、現地の避難所で見たのはこれが日本の避難所かと疑いたくなるほどの悲惨な光景だった。仮設トイレは設置されておらず、体育館のトイレの前にはプールから組んできた水の入ったバケツや洗面器が並べられていたが、いくつかのトイレは汚物が詰まって使用禁止の張り紙が貼られていた。その時はまだ一部を除き停電しており、深刻な断水や通信障害も続いていた。避難所の周辺には数日待の降雪が残っていて風は冷たく、その日の最低気温は1.9℃。そんな寒さの中、天井の高い避難所に1台しかない石油ストーブから離れると床は冷たく、避難者は「寝具も不足していて眠れる状態ではない」と言っていた。掛ける言葉がなかった。トイレだけでなく水・食糧も不足していた。そこの避難所には約400人が入っていましたが、備蓄は300食分しかなかったそうだ。そこで周囲の住民たちが残り物の正月料理やインスタント食品や菓子類を持ち寄り分け合っていたが、それでも焼け石に水だったという。 後で調べたのですが、輪島市(震災前の人口2万3500人)の水・食料は1800人×3日=5400食しか備蓄していなかったそうです。輪島市の避難者数はピーク時(1月5日)1万2778人でしたらから足りるはずがありません。17年前の07年能登半島地震の時の最大避難者数2600人だったことを参考に備蓄数を決めたとのことです。輪島市は一定期間被災者が暮らすことのできる避難所を48箇所指定していましたが、水・食料簡易トイレなど避難生活に必要な物資は学校や道の駅など26箇所の避難所には備蓄施設もなかった。財政力にもよるが、自治体によっては限られた防災予算で結果として過少備蓄になってしまったところも多いが、こうした過少備蓄の実情は災害が起きない限りあまり明らかにされないのが実情。そのため日本中どこでもこうした悲惨な避難所となる可能性がある。これからはライフラインからライフスポット防災にシフトすべきではないか。 山村武彦 |
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