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パキスタン北部地震・現地調査報告/山村武彦
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筆者の後ろはカシミール・ムザファラバードのホテル NWFP州アバタバードのモスク
野戦病院状態で野外で治療を受ける人々(アバタバード・アユーブ記念病院)

パキスタン北部バラコートバンコーダ村・シャマルダンさん(26才・左上)は
家(右上)が崩壊し母親と子供二人を亡くしテントで暮らしている
警官もボランティアも異臭と埃を避けるためにマスクが離せない
各所で道路が崩壊しラバで救援物資を運ばなければならない地域も多い
被災地に行くときはいつも車一杯バナナを積んで行く、子供たちの笑顔が嬉しい
倒壊した12階建てのマルガラタワーズ(イスラマバード) その前にあるマンションは安全とされている

�犠牲者8万人を超える可能性
 2005年10月8日日午前8時50分(日本時間午後0時50分)ごろ、パキスタンの首都イスラマバードの北北東約90Kmを震源とするマグニチュード7.6(震源の深さ約26Km)の地震が発生。震源地から100Km以内でも激しい揺れが襲ったと見られ、最終的な今回の地震による死者は8万7300人以上。地震により断絶した道路、通信システムの回復につれ、今後さらに被害は増えることが予想される。パキスタンでは97%がイスラム信者といわれているが、イスラムの重要な宗教行事ラマダン(断食jが始まっていた。学校や会社勤務の人は別にして、早朝(日の出前)礼拝を済ませた人たちは家に戻り、寝ていた人も多く、それにより逃げ遅れた人たちもいたようだ。学校が倒壊して多くの子供たちも死傷した。
日本人父子2人が違法建築物の犠牲で死亡
 邦人では国際協力機構(JICA)から派遣された福岡県出身の楢原覚さん(36)と長男の輝ちゃん(2)は、イスラマバードの12階建てアパート「マルガラ・タワーズ」の一階で被災し、倒壊したがれきの下敷きになりイスラマバードの病院で死亡が確認された。奥さんのひろみさん(34)も負傷し同じ病院で治療を受けたが重傷を負っているという。このアパートはもともと10階建てであったが、無許可で2階増築したため違法建築と当局から指摘されていた。イスラマバード市内で倒壊したのはこの建物だけだった。
救援物資奪い合い(パキスタン・ムザファラバード)
 大地震発生から4日目の11日、震源地に近いカシミール地方の中心都市ムザファラバードに救援物資を積んだトラックが到着すると、「食べ物を!」と口々に叫ぶ被災者の間で激しい奪い合いが起きた。当局によると、被災各地でこうした光景が繰り広げられており、救援物資がきちんと行き渡らないのではないかと懸念が高まっている。ムザファラバードs内には正規の配給所が6カ所作られている。その1つのサッカー競技場には、民間支援団体のトラック10台が米や砂糖、食用油や飲料水など支援物資を積んで到着したが、トラックが仮設避難所に近づいた時点で、トラックに飛び乗り物資を奪い取ろうとする被災者が相氓「だ。「食べ物が必要なんだ」と叫び、トラックから食糧をもぎとる男性や、救援スタッフが手渡そうとする物資を奪い合う人々にトラックは取り囲まれた。物資を奪い合った被災者は約300人で、ほとんどが男性だった。
 大きな砂糖の袋を担いで逃げた男性もいれば、飲料水の大きな容器を乗せた電動台車を引いて逃げた男性もいる。負傷メはなかった。
地震発生以来、ほとんど何も食べていないという建設作業員は「食糧が配られるまで待っていられない。ともかく食べ物が必要なんだ」とAP通信に話した。
押し寄せる被災者の集団が暴徒と化すのを警戒して、いったんは競技場から引き返したトラックもあった。警備にあたっていた軍幹部は「被災者は犯罪者ではない。普通の人がおなかをすかせている。救援物資がもっと届くようになれば、桝ヤは好転する。ただし、配給体制はもっと整える必要がある」とAP通信に話し
た。
250万人の被災者・冬に向かい毛布が不足
 
現地で被災者の声を聞くと、10人のうち8人が住む場所が欲しい、テントでもいいからという。被災地はカシミールやバラコートなど11喧魔ノなると雪が降る地域。衣料品は有り余るほど寄せられているが、寒さをしのぐ住む場所が確保できないと数万人が凍�するといわれている。昨年来のスマトラ地震、ハリケーンなど国際社会が度々行ってきた緊急x援も息切れしつつあるように見える。国際的な防災基金制度の確立が望まれる。
印パ紛争が救出救援作業に暗い影

 カシミール地方はインドとパキスタンが領有権を巡って激しく争ってきた地域で、印パ両国とも停戦ラインをはさみ現在も軍隊がにらみ合いを続けており、両国とも実効支配地域について、外部の救助隊及びボランティアの立ち入りをも一切禁止している。パキスタンタ効支配地域のカシミール地区は大きな被害が出ているものと見られ学校など多くの建物が崩壊し、救出作業は全く進んでいないという情報ももたらされ、一部では救援物資の略奪が始まっているという。領土紛争や政治的v惑が災害や救援活動を一層深刻なものにし、被災者の心に暗い影を翌ニしている。インドはパキスタンに対して救援物資を送った。2001年のインド西部地震の時には、紛争を一時棚上げしてパキスタンからインドへ毛布等が送られた。こうした共通の困難に対して、印パ両国はこの災害を契機に和平への道を進むべきである。この災害は神が与えたチャンスとして受け止めるべきである。
阪神・淡路大震災の10倍の地震エネルギー
 この地域は1935年にマグニチュード8クラスの地震が発生するなど、日本と同じように過旧Jり返し大地震が襲う場所である。
1993年マハラシュトラ州地震、2001年インド西部地震など大地震が頻発するなど、ユーラシアプレートとインド・オーストラリアプレートの境界にあたるこ地域は地震の巣といわれている。地震の規模を示すM7.6という地震規模は阪神・淡路大震災(M7.3)以上のエネルギーで、今後しばらくはM6.5〜M7クラスの余震発生が懸念される。
高層マンション崩壊は違法建築)
 深さ10Kmで大きな地震エネルギーが放出されると表面波として伝播しやすく、長周期震動(1サイクル5秒〜10病の揺れ)になる可能性がある。今回90Kmも離れたイスラマバードで多くの高層アパートなどが倒壊したのは、この長周期震動ではなく、違法建築によるものと推定される。


犠牲者のご冥福とご遺族・被災者に心よりお見舞い申し上げます
防災システム研究所・防災アドバイザー 山村武彦