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2010年 メキシコ湾・石油採掘基地爆発・原油流出事故

史上最悪の原油流出事故
 2010年4月20日、米国ルイジアナ州南東沖メキシコ湾にある英国BP社の石油採掘基地で爆発事故が発生した。折損した配管から今も膨大な原油が流出し続け広範囲の海及び海岸で深刻な事態が懸念されている。ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、フロリダの各州は4月30日に非常事態を宣言した。流出原油はすでにメキシコ湾沿岸に到達しつつあり、エビ、カキ、カニなどの魚介類・海産物・漁業に壊滅的ダメージを与えている。それだけでなく生態系破壊、生物被害、環境汚染など被害はさらに広がりつつある。
 米国地質調査所(USGS)は5月27日現在で、米南部メキシコ湾の原油流出量は推計7200万リットルに達し、1989年にアラスカ沖で約4200万リットルの原油が流出したエクソン・バルディズ号の事故を超え、米史上最悪の原油漏えい事故になったことを明らかにした。USGSは科学者チームの試算で1日に190万〜380万リットルが流出していると推計している。国際石油資本の英国BP社は1日180万リットルの原油が漏れているとしていたが、それ以上流出していることになる。
 水深約1500mの深海油田からの流失のため「空前の難作業」(油田専門家)の指摘もある。タンカー事故と異なり油田そのものからの継続的流出のため短期間で流出を食い止めることが目下の急務となっている。5月以降ルイジアナ州沿岸に次々と油が漂着し始め、油まみれの海鳥の死骸が浜辺に打ち上げられている。
 BP社のヘイワード最高経営責任者(CEO)は「漏出防止や環境への影響を食い止めるために何でもやる」と話す。しかし、海底油田に無人ロボットを送り込み流出元の遮断を試みているものの成功していない。

湾流に乗れば汚染区域は急激に拡大する
 メキシコ湾流は黒潮と並ぶ非常に強い世界最大級の海流で、湾流又はガルフストリームとも呼ばれ、カリブ海からメキシコ湾に入りフロリダ海峡を通って再び大西洋に流出する。その後、北米大陸東岸をフロリダ半島沿いに北東方向に進み、ハッテラス岬周辺で東に転じてから離岸する。離岸後は北大西洋海流と呼ばれ一部はポルトガル海流になる。この湾流の幅は約200Km、厚さ2000m、流量は7400万〜9300万トン/秒といわれ、スピードはミシシッピ川やアマゾン川をしのぐほどで、もっとも速い部分では時速9kmといわれている。万一流出油がこの湾流に乗るとさらに汚染範囲が急速に拡大する恐れがある。