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2015年カリフォルニア山火事
現地調査写真レポート:文・写真/山村武彦

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30℃を超える酷暑の中、猛火に立ち向かう重装備のファイアーファイターズ
画像提供:AP通信社 

ロッキーファイア・ジェルサレムファイアの公共情報官(Public Information Officer)
Hugo Patino氏(Modest Fire Department Battalion Chief)に大変お世話になりました
心より感謝と御礼を申し上げます/山村武彦

★悪魔の風(ディアブロウインド)
 サンフランシスコなどカリフォルニア州北部では毎年秋から春にかけて悪魔の風・ディアブロウインド(Diablo wind)とよばれるこの地方特有の局地風(風速20m~30m)が吹き荒れる。(Diabloとはスペイン語で悪魔の意味)。一般的にカリフォルニアに吹くのは海からの風だが、季節によってディアブロ渓谷方面からベイエリア方面に向かって強風が吹く。ロッキー山脈とシエラネバダ山脈の間にあるグレートベースン(大盆地)と周辺砂漠地帯は、特有の地形・気象条件からの乾燥地域である。フェーン現象のようにそこから吹き降ろす乾燥し高温の風により山火事が多発する。降水量の少ない地域のため元々山全体が乾燥していて、いったん火災が発生すると強風にあおられ飛び火し同時多発広域山火事となり手に負えなくなる。
★サンタアナの風
 また、カリフォルニア州南部にもサンタアナ風(Santa Ana Windo)と呼ばれる局地風が吹く。(Santa Anaは、スペイン語で聖母マリア様の母である聖アンナを意味する)。サンタアナの風は秋から冬を中心にして、南ロスアンゼルス盆地に吹く高温で乾燥した風で。ディアブロウインドと同じようにグレートベースン付近で発達する高気圧から低緯度方向に吹く風で、風上にはモハーべ沙漠があるので、ここでさらに昇温し乾燥した風になる。
 サンタアナ峡谷から北東ないし東の強風となって吹き出し、ニューボルト海岸付近から太平洋上160kmくらいにまで達する。沙漠からの砂塵をともない低湿のため、絶縁体に帯電が生じ、時には燃料の爆発事故まで生じる。サンタアナの風が吹くと海岸部は砂漠より高気温になることが多い。また、山火事多発の原因となる。とくに夏に続く秋から冬にかけての火災の危険はきわめて大きい。年によっては南北カリフォルニアで数百か所の山火事となって住民を脅かしてきた。まとまった雨が降らない限り鎮火には至らないのがこの地域における山火事の特徴である。
出典/Global news

 数年前から干ばつが続くアメリカ西部で複数の大規模な森林火災(山火事)が発生している。とくに深刻なカリフォルニア州北部では2015年7月中旬から落雷などにより山火事が相次いで発生(左図California Statewide Fire Map参照)。これまでに約5万~8万ヘクタールの山林が焼失し、住宅約100棟が焼失、消防隊員1名殉職という甚大な被害となっている。カリフォルニア州ブラウン知事は7月31日、非常事態を宣言し住民およそ12,000人に避難命令を出し、一部州兵も動員して空と地上の両面から消火活動を進めている。
 しかし、深刻な干ばつに加え強風のため火の勢いは弱まらず消火活動は難航している。当初はサンフランシスコから約130マイル(約210㎞)のレイク郡クリアレイク周辺が主な火災地域で、その地域の道路名にちなんでロッキーファイアと呼ばれていた。その後隣接するジェルサレム(jerusalem)道路周辺にも飛び火・延焼拡大している火災をジェルサレムファイアと呼んでいる。私はカリフォルニア州森林防火局のロッキーファイア・ジェルサレムファイア前線基地・Hugo Patino 氏の案内で現地を回った。燃え尽き無残にも焼け焦げた家や車両だけでなく、強風に煽られた火の粉(フライングファイアー・スポット-ファイヤー)により、数㎞以上離れた場所に極めて短時間に飛び火していく様を目撃し、予断を許さない延焼拡大スピードに戦慄驚愕した。

下図上部の茶褐色部分がロッキーファイア(Ricjy Incident)
下図中央部の赤い部分が、延焼しつつあるジェルサレムファイア(Jerusalem Incident)

たき火、バーベキュー禁止の標識

乾燥した灌木が燃え上がると、火のついた葉や実が火災旋風と一緒にスポット-ファイアーになる
 



photographer:seiji yamamura

山間地は気流が不安定でダストデビル(塵風・つむじ風)が各所にみられる
こうした地形で火災が発生すると火災旋風が起こりやすい

白く見えるのは焼失後の灰

 
遠くから飛んできたスポット-ファイヤー(火の粉・飛び火)で炎上
数分後にはさらに飛び火し下図のように短時間で延焼拡大していった(下図)




 

赤く見える部分はヘリコプターから空中散布された消火剤(延焼を防ぐリン酸アンモニア)

消防隊の活躍で間一髪 焼失を免れた家

焼失した家

 


photographer:seiji yamamura

photographer:seiji yamamura

photographer:seiji yamamura


 


photographer:seiji yamamura


 

photographer:seiji yamamura

仲間の死を悼み半旗を掲げる ロッキーファイア・ジェルサレムファイア前線基地

 

 





ロッキーファイア・ジェルサレムファイア 防火前線基地

前線基地のランドリーモービル内(洗濯トレーラー)(上図)
前線基地のシャワーモービル(シャワートレーラー)(下図)

前線基地に設置された約50台のスリープモービル
(1トレーラー内に、3段・42ベッドがあり隊員たちは交代で眠る)
photographer:seiji yamamura




トイレの脇には足踏み式 手洗いユニット

前線基地のキッチンモービル


隊員たちに配られるランチ(体力消耗を補うため、高カロリーとなっているとのこと)
シールには「LINE LUNCH」と書いてあるがこの「LINE」には様々な意味があるようだ
前線(Front Line)という意味の「LINE」、軍隊だと「戦列」「戦闘部隊」も表すそうだ
 (下図が「LINE LUNCH」の中身)


前線基地の前で売られているジェルサレム火災のTシャツ(10ドル)

山火事が続く中、電力会社の復旧作業が急ピッチで進められている


ロサンゼルスとラスベガスを結ぶ主要道路
州間道路15号線サンバーナディーノ付近で山火事発生車両約20台焼失
(写真提供:AP通信社)
 
ネバタシェラ山脈の麓・ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ15号線近くで枯草火災発生
強風に煽られフリーウエイ走行中及び立ち往生した車両約20台焼失
場所はラスベガスからロサンゼルスに向かう一方通行のケイジャン・パス(Kajon Pass)附近
(画像提供:AP通信社)
上下線がセパレートされた一方通行路の4車線と両サイドに路肩があり、道路幅は約20m

 
道路上には焼け焦げた痕跡が残っていた

 




乾いた大地はわずかな火源で牙をむく
photographer:seiji yamamura

密集樹林が燃える森林火災というより、乾燥した低灌木等に火が付き強風に煽られ
フリーウエイをまたいで延焼し、高温の熱風が車両を襲い炎上させたものと推定される
豪州で山火事は「forest fire(森林火災)」とか「bush fire」と呼ばれていたが
カリフォルニアではその道路名などからロッキーファイアとかジェルサレムファイアと表し
ネットやメディアはサンフランシスコ周辺山火事を「Wild fire」と呼び
州道15号フリーウエイ火災を「brush fire(低木火災)」などと伝えている

乾燥時は低灌木などの枯草火災でも、幅20mの道路でさえ防火帯の役割が果たせない
日本でも高速道路、一般道、空き家・空き地、河川敷の下草刈りなど周辺整備と防火対策が重要

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