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 新型インフルエンザ災害(パンデミックパニック)に襲われた神戸(写真レポート)
(写真・文/山村武彦・2009.5.20)
最新著書:感染弱者のための新型インフルエンザ対策

パンデミックパニック?
 2009年4月24日(メキシコ政府発表)に端を発した新型インフルエンザA(H1N1)型騒動。 WHOをはじめ日本政府は当初から弱毒性(季節性インフルエンザと同程度の致死率と想定)とされていたにもかかわらず、強毒性鳥インフルエンザ(H5N1)を対象にした対策ガイドラインや行動計画をあてはめてしまった。これは「牛刀を以って鶏を割く」(割鶏焉用牛刀)に等しい。そのため、水際撃退作戦及び検疫偏重で国内の医療体制がおろそかになっていく。また、感染者の出ていない離れた学校まで臨時休校、外出自粛、旅行中止で町は閑古鳥が鳴き、関係のない地域のイベントも中止、観光客激減、国際会議欠席、深刻な経済停滞を招くなどなど。世界同時不況にあえぐ企業や社会生活に深刻な影響を与えている。また、発熱相談センターや発熱外来がパンク状態になり、医療機関が発熱者の診療拒否を行ったり、被害者である感染者に対して誹謗中傷など心無い行為も出るなど、パンデミックパニックを引き起こした。
 状況が把握できなかった最初の段階で最悪を想定し対応したことは決して間違いではなかった。しかし、一定の治験が得られた時点(通常2週間程度)で、致死率などの結果の重大性から「ハイリスク・インフルエンザ」か「ローリスク・インフルエンザ」かの判定を行って早期軌道修正を図るべきだった。つまり、医学的見地からだけでなく危機管理視点からも対応すべきであった。季節性インフルエンザの致死率より低いローリスクインフルエンザであれば、季節性インフルエンザと同じ対策に切り替えるべきではなかったか。深刻なダメージを受けた神戸の街を見て、特定ウイルス蔓延だけを前提にした固定概念マニュアルの怖さと感染症対策の困難さを感じずにはいられなかった。そして、明確なメッセージのないまま浸透したパンデミックパニックは、企業などの「出張自粛」「イベント延期」など、いまだに尾を引いている。
感染弱者対策を急げ
 ローリスクであろうと、ハイリスクであろうと、新型インフルエンザ対策の重点と優先順位は感染弱者対策である。感染弱者とは、ハイリスク群患者(年齢を問わず何らかの介護施設に入っており病気にかかっている人、ぜんそくを含む肺疾患、心血管疾患がある人、慢性の代謝性疾患(糖尿病を含む)、腎臓病(腎不全)、血液疾患や免疫抑制のため入院中か定期的な通院が必要な人、子供もしくは10歳代でアスピリンの長期投与を受けている人、妊娠中期及び後期にあたる人など)だけでなく、感染率が高く致死率の高い十代の青少年や感染機会の高い医療従事者、教職員なども含まれる。今回、こうした感染弱者に対するケアや配慮がなされた形跡はほとんどみられなかった。感染弱者とその家族及び関係者の自助努力には限界がある。政府及び地方自治体は、感染弱者向け情報提供、通院支援、医療支援、財政支援など地域ごとにきめ細かい対策が急務である。
米国のパンデミックパニック
 1976年2月、米国ニュージャージー州フォートディクス陸軍基地で、19歳のDavid Lewis二等兵が倦怠と体調不良を訴えたことからパンデミックパニックは始まった。彼は訓練を休むほどではなかったにもかかわらず24時間後に死亡し、解剖の結果、死因は豚インフルエンザによるものと断定される。調査したところ、感染の疑いのある兵士は500人以上に上り、数人が入院した。医師たちはスペイン風邪を想起し危機感を募らせていく。
 保健当局はこのままだと数千万人が死亡する恐れがあるとして、「全国民・ワクチン予防接種プログラム」を提示し、当時のフォード大統領に即時対応を求めた。選挙間近だったフォード大統領は、1億3500万ドル(現在価格に換算すると約5000億円)の巨費を投じプログラム実行を決定する。1976年10月から集団予防接種が開始された。しかし、開始から2か月足らずの間にワクチン接種後にギラン・バレー症候群を発症したという報告が続々と保健省に届くようになり、約500人が発症し30人以上が死亡。その情報が伝えられると、またたくく間に危険を冒してまで予防接種を受けたくないという「接種拒否者」が増えていく。12月16日、保健当局は急きょプログラム中止を発表する。
 その後豚インフルエンザは流行せず、豚インフルエンザで死亡したのはLewis二等兵ただ1人だけだった。その豚インフルエンザウイルスを精密調査した結果、季節性インフルエンザより致死率の低いローリスクインフルエンザウイルスであったことが判明する。「2000万人死ぬ」とした根拠の「スペイン風邪と同じであれば」という前提条件が提案書から削除されていたことも後から判明し、意図的にインフルエンザ恐怖を煽ったのではという疑念も生まれた。また、一部政治家等の薬剤会社との癒着なども取りざたされる。以来、ワクチンと関係者に対する不信感が募り、広域感染症対策は保健当局にだけ任せず危機管理視点でも対応するようになっていく。2005年、米政府は新型インフルエンザ対策の総括主管を保健省から国土安全保障省に移し、医学だけでなく危機管理としても対応する姿勢を鮮明にする。2009年春から流行した豚インフルエンザに対しても、当初こそ発症者が出た場合は学校閉鎖などを指示したが、今回の新型インフルエンザウイルスがローリスクと判断されるとすぐに「感染者のみ休ませ、休校させる必要はなし」と再三にわたって指導している。



JR西日本三ノ宮駅(乗降客数も激減)


店舗従業員(一人)が感染し、休業となったJR三ノ宮駅構内のキオスク(下は店に貼られたコメント)
周辺系列7店舗も連座休業中(ここまでする必要があるのだろうか?)


閑散とした繁華街で献血もピンチ


人影まばら・・・いつもならごった返している三宮センター街・午前11時半(上)と東門街・午後1時(下)
一部は定休日もあるが、インフルエンザによる臨時休業も多い


マスク品切れ店続出

ガーゼマスクでも効果があります」と呼び込み

マスクのある店に人が殺到

様々な影響が出ている



感染者は被害者にもかかわらず、誹謗中傷が絶えない

感染者が一人もいないのに一斉休校(20日現在の休校・休園は4826)

休校している小中学校は広域避難場所でもあるが・・・もし今、大地震が発生したら・・

 

オフィス街の昼休み時間

いつもは口も漱ぐのだが・・・(生田神社)