住宅(家庭)の防災対策(住まいの安全・耐震化のすすめ)/防災システム研究所

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住宅(家庭)の防災対策(住まいの安全・耐震化のすすめ)

間違いだらけの防災対策(優先順位は?)
 地震防災対策は?と聞くと、たいていの人が「非常食料と非常用飲料水を用意しています」と答えます。それはそれで大切なことですが、阪神・淡路大震災で6,432人が犠牲になりましたが、水や食料が不足して死んだ人は一人もいません。亡くなった人の約80%が建物や家具の下敷きになった圧死といわれています。防災対策の優先順位は、まず家や室内を安全にすることなのです。
阪神大震災(1995年1月17日)一瞬で住宅崩壊 阪神大震災(1995年1月17日)下敷きになった人の救助活動


上記写真は地震発生当日の午前中に現地調査に入った山村武彦が撮影したものです。瓦屋根の古い木造の建物が一瞬に崩壊しました。
地震!机の下にもぐれ?
地震に襲われたら机の下にもぐれといいますが、古い家に住んでいたら机の下にもぐるより、直ちに脱出することです。なぜ机の下にもぐれというのかと言うと、倒れてくる家具や電化製品から身を守るためなのです。ですから、机の下にもぐることより、家具や電化製品の転倒防止対策を行うことのほうが大切で、机の下にもぐらなくても良いように室内の安全対策をすることが優先順位なのです。安全な街づくりを推進するためには、防災意識を啓発し、防災対策の優先順位を分かりやすく説明し、市民の防災度を上げることが急務です。

建物の耐震性(建築基準法にみる耐震基準改正の歴史)
住宅の耐震基準の変遷を見て、自宅の耐震性について考えてみる必要があります。そこで建築基準法の耐震基準に係る歴史を参考にしてください。

1891年(明治24年)の濃尾地震(全壊家屋140,000棟、死者7,273人)を契機に翌年、震災予防調査会発足、日本の耐震研究が始まる。

1920年(〈大正9年)市街地建築物法施行
日本で初めての建築法規。30年後の1950年(昭和25年)に制定される建築基準法の原型となった。木造住宅において構造基準などが定められたが、その時点では耐震規定は少なく、筋交いについては特に規定されていない。

1924年(大正13年)市街地建築物法大改正
前年1923年(大正12年)の関東大震災(全壊家屋128,000棟、死者142,000人)の大惨事を受けて、1906年のサンフランシスコ地震などを調査して耐震性の研究をしていた東大の佐野利器教授が提唱した「家屋耐震構造論」の「設計震度」が採用された。鉄筋コンクリート造などの水平震度は0.1以上とし、木造家屋などでは筋交いなどを入れる耐震規定が初めて法規に盛り込まれた。

1950年(昭和25年)建築基準法制定
1944年(昭和19年)の東南海地震(全壊家屋17,600棟、死者1,223人)、1945年(昭和20年)の三河地震(全壊家屋7,200棟、死者2,306人)、1946年(昭和21年)の昭和南海地震(全壊家屋11,591棟、死者1,330人)、1948年(昭和23年)の福井地震(全壊家屋36,184棟、死者3,769人)など相次いで発生した地震災害の教訓を活かし、それまでの市街地建築物法を廃止し、新たに建築基準法が制定された。施行令に構造基準が定められ、許容応力度設計が導入された。木造住宅においては床面積に応じて必要な筋交い等を入れる「壁量規定」が設けられた。このときに初めて床面積あたりの必要壁長さや、軸組みの種類、倍率が定義されるようになった。

1959年(昭和34年)建築基準法改正
防火規定及び木造家屋の壁量規定が強化された。床面積あたりの必要壁長さや軸組みの種類・倍率が改定された。

1971年(昭和46年)建築基準法改正
1964年(昭和39年)の新潟地震における液状化現象、1968年(昭和43年)の十勝沖地震(全壊家屋673棟、死者52人)で多くみられたRC柱のせん断破壊を教訓に、鉄筋コンクリート造の柱のせん断補強規定が強化された、木造住宅においては基礎コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の布基礎とすること、風圧力に対しては見附面積に応じた必要壁量の規定が設けられた。

1981年(昭和56年)建築基準法施行令大改正(新耐震設計基準制定
1978年(昭和53年)の宮城県沖地震(全壊家屋6,600棟、死者28人)発生後耐震基準が抜本的に見直し耐震基準を大幅に改正、現在の新耐震設計基準が制定された。この新耐震設計基準による建物は1995年の阪神・淡路大震災においても被害は少なかった。これを機に「1981年(昭和56年)以前の耐震基準による建物」と「1981年(昭和56年)以降の新耐震基準による建物」といった耐震性に係る区分や表現がなされるようになった。木造住宅においては壁量規定の見直し、構造用合板や石膏ボード等の面材を張った壁などが追加された。また、床面積あたりの必要壁長さや軸組みの種類・倍率が改定された。

1995年(平成7年)建築基準法改正
1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災(全壊家屋106,000棟、死者6,432人)の教訓を活かし、接合金物等の奨励。その年の12月には耐震改修促進法が施行され、1981年(昭和56年)以前の建物(新耐震基準以前)は、耐震診断を積極的に行うよう推進することになった。

2000年(平成12年)建築基準法改正
阪神・淡路大震災を教訓にして主に次の点が改正された
1、地耐力応じて基礎を特定し、地盤調査が事実上義務化になった(施行令38条)、地耐力20kN未満は基礎杭、20〜30kNは基礎杭又はベタ基礎、30kN以上は布基礎も可能
2、構造材とその場所に応じて継ぎ手・仕口の仕様を特定(施行令3章3節)、筋交いの端部と耐力壁の脇の柱頭・柱脚の仕様の明確化。壁倍率の高い壁の端部や出隅などの柱脚ではホールダウン金物が必須となった。
3、耐力壁の配置にバランス計算が必要となった(施行令3章3節)、壁量の簡易計算、偏心率の計算が必要となり、仕様規定に基づいて設計する場合、壁量簡易計算を基本とすることになった。

耐震関連の動き
1、2001年(平成13年)9月、国土交通省は既存住宅の倒壊危険性を判別するための耐震等級評価指針を発表。
2、2001年(平成13年)10月、品確法性能表示制度スタート、構造などにおいて耐震等級が盛り込まれる。
3、2001年(平成13年)10月、住宅の耐震性能、建設年代に応じて地震保険料の割引制度発足。

現在各市町村では、耐震診断、耐震補強に関して補助金などを出し、住宅の耐震化を推進しています。既存の建物(特に古い建物・新耐震基準以前)は早急に耐震診断を実施し、住まいの耐震化を進める必要があります。また、古い建物に住んでいる場合に地震に襲われた場合、崩壊のおそれがありますので、家族で話し合いいざっというときの対応策を決めておくことが大切です。


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